ボクは地方に家を建てている。関東からドアツードアで4時間くらいだ。少なくとも月に1回は出かける。多い時は3回くらい行ったか。そんな生活を1年くらい送ってようやく家ができあがろうとしている。
梅雨の最中に地鎮祭をやった時のこと。記念撮影をしてくれた設計士さんがなにやら変わったカメラでボクたちを撮ってくれた。なんですかそのカメラはと聞くとレンジファインダーなんですよと教えてくれた。600万画素しかないんですけど新型が出ないんでずっと使ってますとのこと。
見るとアナログメーターのついた古めかしいデザインのカメラであった。なんとフィルム巻き上げレバーまでついている凝りようである。デジタルなのにレバー巻かないといけないんですよ。変なカメラでしょ。でもレンズは最新のものがつけられるんで写りは遜色ないんです。会社のサイトの写真もこれで撮ってます。
なんと、600万画素の古いレンジファインダーで新築物件の紹介写真を撮っているという。その新築紹介写真を見てこの設計会社を選んだのはこのボクだ。写真がものすごくよかったのである。なんだそのカメラは。
さっそく自宅に帰り名も知らぬ600万画素のレンジファインダーカメラを調べてみた。諸君らにはもうわかっているだろう。それは生産中止となってしまったあの名機、世界初のデジタルレンジファインダーカメラ、EPSON R-D1だ。今なお愛用している人も多いだろう。今サンプル画像を見ても素晴らしく味のある画を吐き出してくれている。
新しいのにしようと思うとライカしかありませんね。という設計士さんの言葉がガッチリと心に残ってしまったものだから、次はライカを調べるしかない。こうして先の記事で書いた通りにライカ沼に落ちていくのである。
ライカは人間からどこまで能力を引き出すだろうか
ライカというカメラにはこれまでまったく興味がなかった。古くさくオヤジっぽい。電子制御された最新の機能満載のカメラがカッコよく思えていたからだ。ビンテージデニムだってまったく興味がない。古着なんて真っ平ゴメンだ。そう思っていた。しかしこの流れのままにボクはEPSON R-D1を調べ、最新のライカであるLeica M10を調べた。
作例を見た。心が震えた。この味が求めていたものかもしれないと思えた。ボクはライカからなにを引き出せるだろうか。いや逆だ。こいつはボクからなにを引き出してくれるだろうか。ボクは自分の可能性が知りたくなってきた。
小学生では父親のPENTAX SVで写真を撮り始め、高校生のバイトでOLYMPUS OM1を買い、それから四半世紀ついにライカに到達するのである。
なぜフルサイズを選択するかは35mmフィルムカメラの歴史に意味がある
2014年にOM-D EM-1を買った。APS-CではD90を持っていたがさすがに旧式となっていたし最新のカメラを体験したくて小型軽量であるフォーサーズを選択した。高校生の時に初めて買ったカメラがOLYMPUS OM1だったこともあるからメーカーに思い入れもあるからだ。
だが2016年にCanon 6Dを使い始めるとフルサイズの描写力に圧倒された。それは解像度とかレンズがいいとかではなく写真の表現力がボクの感性にあっているだけなのだと思う。フルサイズとは35mmフィルムカメラと同じ画角であり、ボクが長く見てきた写真の世界観と近いかもしくはまったく同じものだ。だからフルサイズで撮られた写真が心地よく感じるのだ。
バルナック型ライカが35mmフィルムカメラを生み出してから世界に流通する写真の多くが35mmフィルムになった。だから現代生きている人が感じる違和感のない写真は35mmフィルムカメラの画角だ。デジタルになっても同じくフルサイズカメラで撮った写真が心地よいのだろう。
センサーサイズが大きいほどぼけ味をだせる。つまりは表現の幅が広がるということだ。絞ればフォーカスの範囲が広がり開ければアウトフォーカスを大きくとり被写体を主張できる。この表現力の広さはフルサイズに敵わないと思ってしまった。
しかしフルサイズデジタルカメラはとにかく大きい。特にレンズは巨大で重量級である。M型ライカはレンズがとにかく小型で軽量なのが特徴だ。それはまず最高のレンズを設計し、そのレンズにあわせてボディ設計したからである。レンズとボディをセットで使用するからこそ最高の性能が発揮される。
Leica M10のボディ重量は660g、フルサイズデジタルカメラであるα7iiは599gである。ボディだけではそれほど軽くはない。ところがレンズを比較してみよう。SUMMILUX 35mm f1.4は320gであり、SEL35F14Zはなんと630gだ。ちなみにCanon EF35mm F1.4L II USMは760gある。ボクが使用しているSUMMICRON 35mm f2は252gという軽量級だ。
AFや手振れ補正の有無はあるが、単純にボディとレンズを持ち歩くという視点だけで見てもライカを持つというのは街歩きカメラマンにとって選択肢としてありなのだ。それにデカすぎるレンズとカメラを持って街を歩くというのはいささか恥ずかしい。古めかしいカメラであると被写体もなんとなくまったりとしてしまうものだ。